新たな技術、食の未来への挑戦
2017年より敷島ファームでは、牛のDNA技術を用いた研究やその応用について、
一般社団法人家畜改良事業団(LIAJ)と共同研究をおこなっています。
血統や過去の実績を利用する従来の品質改善方法では、指標となる実績の蓄積までに長い年月が必要な点や、兄弟の誤差を考慮することができないなどのリスクがあります。
家畜改良事業団が研究・推進する新たなDNA技術「ゲノミック評価」は、DNA情報を利用し早期に個体ごとの遺伝的能力を評価をする新しい方法です。 この「ゲノミック評価」は生まれてすぐに個体ごとの評価が可能となりますので、より早く高い精度で改善・改良が可能となります。 また、DNA技術は遺伝病や繁殖性など、生産性にかかわる課題以外にも、おいしさの遺伝的改良など、多方面への応用が可能となる先進技術です。
敷島ファームでは、生育完全一貫生産体制による膨大な蓄積データや精度の高いデータ分析体制、一貫したフィールドでの検証を通して畜産の未来に向けた取り組みに参加しております。
ゲノミック評価を活用した牛群改良、性選別精液を活用した生産性と経済性の検証、ゲノム解析による新たな形質の研究など、新たな技術の研究・検証・実用化をこれからも推進してまいります。
先進技術のその先へ
敷島ファームでは、AI/IoT/ICT技術の検証・研究・開発にも挑戦しております。
敷島ファームでは独自のオンライン牛管理システムにより、すべての情報を一元管理しています。現場作業での必要な機能はクラウド化され、タブレット等で容易にアクセスすることができますので、現場での個体情報確認はもとより、処置入力もリアルタイムに処理されます。また、牛体にセンサーを取り付け牛の状態を常時モニタリングし、状態の変化があればAIが分析、飼育担当者へ報告が届くシステムや自動給餌システムを導入しております。
個々の感覚や経験だけではカバーしきれない部分をAI/IoT/ICT技術が補うこれらの新たな技術により、従業員の負担を減らしつつ、飼育環境や肥育成績の向上を実現いたしました。
ゼロカーボンビーフへの挑戦
敷島ファームでは、ゼロカーボンビーフプロジェクトの一環として、消化器官内環境の改善や高消化吸収性飼料の給与により、温室効果ガス(GHG)発生源となるゲップの抑制や糞便の減少によるGHGの削減に取り組んでおります。
2022年1月より給与開始の高消化性セルロース飼料「元気森森®」は、日本製紙株式会社が製造する次世代の飼料です。セルロースは牧草の主成分で牛の主要栄養源ですが、製紙の工程で木からセルロースだけを抽出する工程があります。その工程で抽出された高純度・高品質なセルロースを飼料化したものが「元気森森®」です。
一般的な牧草の消化吸収率は50%程度といわれていますが、「元気森森®」は99.6%という高い消化吸収率(理論値)となっています。 この高い吸収率により、GHG発生源となる糞便の大幅な減少が期待されております。(那須牧場にて実証試験中)
GHG抑制や減少効果が期待される様々な飼料などの実証試験を、 メーカーや研究機関とともにおこなっております。
サステナブルな農業 〜耕畜連携とスマート農業〜
敷島ファームでは北海道白老町において、企業内耕畜連携型の農園事業を展開しております。白老牧場で日々排出される糞尿堆肥は全て、JGAP品質の良質な完熟堆肥にして自社農園や放牧場に還元しております。これはヨーロッパなどグローバルGAP先進地域の畜産モデルと共通する、環境に配慮した循環型農業の代表的なスタイルです。
2019年から IoT/ICT管理型ハウスの運用を開始いたしました。(北海道白老町) 様々なセンサーにより、農作物の生育状況やハウス内の環境を常時モニタリングし、必要に応じて最適な処置を自動対応またはアラートにて知らせますので、誰もが容易に対応することが可能となりました。
環境に配慮した循環型農業やスマート農業を通して、持続可能な農業を推進いたします。
ジャイアントミスカンサス・エリアンサス
敷島ファームでは、ゼロカーボンビーフプロジェクトの一環として、早期出荷などに取り組んでおりますが、2022年6月より新たな取組みとして、北海道白老町の自社圃場にて『ジャイアントミスカンサス・エリアンサス』利活用プロジェクトを開始しました。
大気中の炭素を吸収して育ち、Co2削減や土壌固定能力に優れ、カーボンニュートラル燃料としても利用される『ジャイアントミスカンサス・エリアンサス』について、敷島ファームではCo2削減・抑制効果はもとより、飼料化・敷料化を中心に検証を進めていきます。本プロジェクトは室蘭工業大学にもご協力いただき、植栽・生育から収穫・利活用までの全工程を範囲とした中長期的な産学連携事業となっております。
「ジャイアントミスカンサス」
オギとススキの自然雑種。和名はオギススキで日本由来のイネ科多年生。植栽後2~3年以降から収穫開始。草丈は3m程 度まで育つ。北海道などの冷帯地域でも栽培でき、バイオマス燃料や家畜の飼料、敷料への活用が期待されている。1ha 当たりCO2換算で年間約50t-Co2の炭素吸収や土壌貯留など優れたGHG削減効果にも注目されている。
「エリアンサス」
イネ科の多収多年生作物。国内では農研機構等により品種研究されている。東北南部・関東北部の低標高地が栽培北限と されている。植栽後3年以降から収穫開始。草丈は3~4m程度まで育つ。手間がかからず収量が高い。バイオマス燃料や 家畜の飼料、敷料への活用が期待されている。