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株式会社敷島ファーム
栃木県那須郡那須町高久丙1796

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ゼロカーボンビーフへの道Ⅷ~ジャイアントミスカンサスの畜産資材能力試験開始~

サステナブル

ジャイアントミスカンサス(以下GM)の試験刈り取りが始まりました。GMは植栽後2~3年以降に刈り取りが可能となります。今回は2022年に植栽した北海道白老郡白老町にあるGM試験圃場で刈り取りが行われました。

敷島ファームではGMの炭素貯留能力(東京農業大学との共同研究)・土地利活用資材・畜産資材・エネルギー資材・その他植物系資材などの研究をおこなっています。※エネルギー資材やその他植物系資材(代替資材等)については今後研究予定。

炭素貯留能力や土地利活用では収穫は副次的な研究対象になりますが、「資材」としての研究ではGMの刈り取りや能力検証が必須要件となります。そして、検証は様々な視点からの評価が必要となります。

敷島ファームは黒毛和牛を飼育する畜産農家です。そのため、自らが必要とする畜産資材としての検証が優先になります。そして現場に即した評価が可能と言えます。畜産資材としての検証は飼料・敷料(牛舎床に敷き牛を守る資材)・堆肥化資材などを予定していますが、2022年にGM事業が開始されてから初めて収穫されたGMでは敷料・堆肥化資材としての検証をおこないます。

今回は先月実施されたGMの刈り取りについてご紹介します。


刈り取りは立ち枯れしている初冬から初春(萌芽前)に行います。今冬は雪が多く、なかなか刈り取りができない状況となっていましたが、やっと圃場に入り刈り取りが出来る状況となりました。

昨年11月に行われた東京農業大学によるサンプル刈り取りの推定では29.6±7.5t/ha(東京農大推定値)、今回の収穫した状態からの推定は10t/haとなりました。秋刈は水分量40~50%ほど、春刈は水分量20%以下まで減少しますので、用途に合わせて刈り取り時期を決めますので、収穫重量のみでの判断はできませんが、春刈には落葉や倒伏によるロスがあります。

越冬前の昨年11月中旬(左)と越冬後の今年3月末(右)を比較すると、11月はまだ若干青い部分が残っており葉も密集していますが、3月の刈取時は完全に立ち枯れしています。そして、下には多くの葉が落ちて、GMはほとんど茎だけになっています。

越冬前の水分量が50%、越冬後が20%とした場合、越冬後の収穫重量は12t/haとなります。不足分の2tは落葉によるロスとなります。また、試験圃場のある北海道白老郡白老町は北海道内でも積雪が少ない地域ですので倒伏などはありませんでしたが、積雪が多い地域では倒伏の懸念もあります。

今回の刈り取りは冒頭の写真に写っている小型の飼料収穫機を利用しましたが、GMは茎が密集していることに加え、落葉が多く絡みやすく、よく詰まり作業効率が悪いことから、検証に必要な分は大半を手刈りしてから粉砕しました。そのため写真にあるような小型機での収穫は推奨されませんのでご注意ください。

敷料など水分量が少ないほど良い場合は、落葉によるロスもある程度は許容する必要がありますが、その年ごとに気象状況と立ち枯れ状況を見ながら刈り取り時期を決めるなど、最大収量を目指した対策が必要と感じています。

粉砕されたGMはしっかりと乾燥しています。糞尿による水分を吸収したり撥水することにより、牛床(牛舎で牛のいる場所の床)の環境を良い状態に保つ為には乾燥状態を維持することが重要となりますので、乾燥していることが重要になります。燃焼エネルギー資材として利用する場合も同様です。

今年収穫したGMは敷料化試験のほかに、堆肥化の検証(熟成堆肥化など)なども行っていきます。


敷島ファームでは温室効果ガス(GHG)削減への様々な取組みをおこなってきました。黒毛和牛生産者としては前例がないGHGプロトコルによる排出量の計測(GHG排出量の把握)・ゲノミック評価による牛群改良を利用した早期出荷(直接的なGHG削減)・飼料や資材の国産化や近隣調達による輸送時のGHG排出削減(間接的なGHG削減)・GMを利用した炭素貯留(GHGのオフセット)など、球環境に配慮した持続可能な農業の研究や実践をしています。

畜産企業にとって温室効果ガス(GHG)の排出は避けられません。動向をみながら待つよりも、良いこと・良いと思われることは率先してやってみるということが重要と考えています。今では多くの牧場で導入されているゲノミック評価を利用した黒毛和牛の改良や、飼料調達など間接的なCO2排出(Scope3)を含めた排出量の把握やGHG削減への取組みは、敷島ファームが何年も前から実施し、その成果や情報を公表・提供してきました。

これらの取り組みが、近年の畜産におけるスタンダードになりつつある今、敷島ファームは新たなステージへと進んでいます。これからの活動報告にご期待ください。