先進技術とこれからの畜産 Ⅰ 〜家畜改良事業団との共同研究開始〜
ゲノミック評価 投稿日:2017年10月01日一般社団法人家畜改良事業団(LIAJ)と家畜遺伝子情報SNPs解析及びゲノミック評価による牛群改良の確立に関する共同研究を開始しました。
ゲノミック評価とは、遺伝子情報(ゲノム)を解析することにより、遺伝的な傾向を見つけ、その傾向をもとに個々の遺伝的能力を評価する手法になります。
個々の牛の基礎能力を評価するゲノミック評価を利用して交配することにより、能力の高い子牛が生まれる率が高くなります。
生まれた子牛も遺伝子検査を行い、ゲノミック評価による適切な飼育や交配を進めますので、効率的に牛群を改良していくことができます。
このように、個々の牛のゲノム情報を解析し評価することにより、劣った部分を補い、良い部分を伸ばしていく改良を適切に進めていく取り組みを「ゲノミック評価を利用した牛群改良」といいます。
敷島ファームでは、この改良技術の確立の為、繁殖母牛4500頭全頭のゲノミック評価を決定しました。
この新しい技術を利用した牛群改良の有効性をLIAJとともに検証していきます。
ゲノミック評価を利用した牛群改良とは
◎従来の牛群改良~
今までは父牛と母牛それぞれの子孫の出荷成績などから能力を予測して交配を決めていました。
種雄牛を自分で飼育している農家はほとんどありませんので、一般的には凍結精液(ストロー)を購入します。その際に種雄牛の能力は知ることができます。
母牛の能力を知るには、交配してから出生、出荷までには3年ほどかかりますので、1つのデータを蓄積させるだけでも3年、1年1産しても4~5年以上が必要となります。さらに同じ種雄牛と交配しないと正確に平均することができません。
研究でもない限りそこまでの手間と時間をかけることはできませんので、ほとんどの場合は種雄牛の能力が高いものを、母牛の父や母母牛の父の能力を見ながら予測します。
一般的に能力の遺伝は2分の1といわれますので、運任せの牛群改良ともいえます。
ちなみに、人の兄弟姉妹はそれぞれ個性があり成長も異なります。牛も同じように個々に能力が異なりますが、上記のような血統による予測の場合、兄弟姉妹の評価は全て同じになります。
そのため、牛群改良は試行錯誤の連続となり、とても時間のかかる取り組みとなっていました。
◎ゲノミック評価を利用した牛群改良~
個々のゲノム情報を解析し、遺伝的能力を評価するゲノミック評価では、膨大に蓄積された遺伝子情報と比較して、個々の能力を評価していきます。
通常の飼育環境において、ゲノム情報は誕生以降に変わることはありませんので、生まれた時点で評価が可能となります。
生まれた子牛のゲノム情報を解析し、一頭一頭の能力を見た上で、次世代繁殖牛として有望な子牛を選抜し育て上げることにより、的確な牛群更新を図ることが可能となります。
既存の繁殖母牛についてもゲノム情報を解析することにより、優先的に更新すべき牛、後継牛を残す牛を明確にし、効率的に牛群改良を進めていくことができます。
また、遺伝的能力が低い牛であっても、良く産む牛には能力が高い受精卵を受胎させ、代理母としてしっかりと貢献してもらうことができます。
また、LIAJでは種雄牛についてもゲノミック評価をしていますので、より精度の高い予測が可能となります。
LIAJでは、敷島ファームが飼育する牛から得られる多くの遺伝情報を分析して、ゲノミック評価の精度を高めるとともに、新たな評価形質についても検証を進めています。
敷島ファームが進めるゲノミック評価を利用した牛群改良は、自社の牛群改良はもとより、畜産の未来を支える事業として推進していきます。